噛んだら歯が痛い
「噛んだら歯が痛い」は日常の歯科臨床でよく見受けられる症状です。ただ昨今は歯に一見異常が見られないケースで「噛んだら歯が痛い」と訴える方が増えてきていて診断治療に工夫しないといけないことが多くなりました。
20世紀の時代なら「噛んだら歯が痛い」は主に歯に大きな欠損(カリエス)がある場合が多かったですが、今世紀では視診でもレントゲン診でも一見異常像が見つからないケースが多く見受けられます。さてさてどういうこと?ですが、やはり歯に必要以上の力が部分的にかかっている場合が多いと感じています。
日常的に昼夜を問わず上下の歯を噛みしめている習慣、TCH(tooth contact habit)歯牙接触癖も多く見受けられます。夜間のくいしばりや歯ぎしりもあります。寝癖、噛み癖もあるかもしれません。これらの態癖は歯に過剰の力を継続的に加え続けます。これが嵩じて痛みを感じる閾値を越えると「歯が噛んだら痛い」となります。
また一見問題ないように見受けられる歯科修復物が生体の噛み合せの調和を乱していれば、噛もうとすればその部位が衝突(早期接触)しますので、痛みを誘発することも考えられます。態癖や修復物による早期接触で歯にクラック(亀裂)が入っていたら、これまたしみるなどの不快症状が出現します。
「噛んだら痛い」は昔なら虫歯(カリエス)が原因でかなり解決できましたが、今はすぐに解決できないケースが増えてきました。きっちり原因を突き止めてそれに対する処置を実施する必要があります。「歯が痛い」は三叉神経という脳神経に支配されている部位での症状ですので、手足などの痛みより強烈に感じます。ただ「歯が痛い」というだけで、歯を抜いたり(抜歯処置)歯のシンケイを抜いたり(抜髄処置)する処置を早急には実施しません。患者さんとの信頼関係が無いと出来ませんが、歯の痛みを和らげる鎮痛剤や応急的な緩和処置を実施して、少し間を空け原因を突き止めた上で最終的な処置を実施します。「歯が痛い」即荒療治的な外科的処置をお勧めしていません。外科的処置を実施しなくてすむ症例を多々経験しています。ただ100パーセントではなくやはり抜歯、抜髄処置が必要になる場合もあります。こういう処置を行うには信頼関係が大事になり、信頼関係が無いと実施困難になります。