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咬合不調は馴れから
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解剖学的には、奥歯の小臼歯・大臼歯の形態では咬頭という出っ張った山のようなところや、小窩裂溝という谷のようにへこんだところが存在します。また前歯では歯列(歯並び)は通常ではV字型やU字型のきれいなでこぼこの無いアーチ状になっています。
個々には歯の位置異常や形態異常が発生して、なかなか理想的な歯の位置、形態とはなりません。それでも永久歯は先天的欠損や矯正治療の便宜抜歯はあるものの、通常では智歯(親知らず・第3大臼歯)を除いて28本存在し、これがそれぞれ対向の歯と絡み合っています(咬合しています)。
この自然な状態から、歯科疾患であるカリエスが発生しますと、歯冠部分や隣接部分が崩壊し微妙な上下の歯の関係が崩れてきます。また歯周病で歯が動揺したり、揺れて位置が変化したり、歯を失うとこれまたダイナミックに上下の歯の関係は変化してきます。それでも人の体はよく出来たもので、何とか機能するように図ります。これを「馴れる」といいかえられるかもしれません。ただ「馴れて」いますが、本来の咬合(かみ合わせ)であるはずも無く、無理して合わせているだけかもしれません。
無理した程度と許容力の差は人それぞれです。無理した時間が長くなり許容力を越えると人によっては咬合の不調和としていろいろな症状が出現してくるかもしれません。「かみにくい」「かんだ気がしない」「かんだら痛い」「かめない」や「顎が痛い」「口が開きにくい」などから、「水がしみる」「歯茎から血が出る」「歯がかんだときギシギシする」「歯茎が腫れた」「歯が欠けた」など、一見咬合の不調和とは関係の無いような症状もあります。
また歯科医院での治療で、冠などの修復物を装着の際、装着物が「なにかまだヘンだ」と思えるときに馴れるから「これでいいです」「これでいいのです」ではいけません。確かに馴れますが、体が顎を微妙に偏位させて「馴れさせて」いるのかもしれません。これが高じて咬合不調となる可能性があります。
人の体は脳や神経により高度に支配されています。スーパーコンピュータ状態です。少し悪くてもうまく制御しています。こんなときはちょっと無理しているかもしれません。無理していても人は「馴れ」のため無理していると感じません。体が発している少し無理しているというSOSが「歯がしみる」のようなどこにでもある些細なものかもしれません。「馴れ」は要注意です。 |
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